2011年10月27日、福島県から来た大勢の女性たちが、原発の即時廃止を訴え、東京・霞が関の経済産業省前で座り込みを始めた。29日まで行われる「原発いらない福島の女たち~100人の座り込み」に参加を表明した福島県の女性は27日正午現在111人。初日の午前中には約50人が集まった。この行動に賛同し、座り込みに加わった人たち約350人とともに、黄色いのぼりやプラカードを立て、経産省のビルを取り囲み、「原発はもうまっぴら! 今すぐ止めて!」と声を上げた。
このグループの中心メンバーのひとりである佐藤幸子さんは「福島の女たちはこの半年間、眠るのも惜しんでいろいろな立場で行動をしてきましたが、遅々として何も進んでいません。福島が今、声を発信しなくてどうするの、との思いでやってきました」と話す。「経済優先できた世の中を変えなくてはいけません。歴史を変えていく中で女の力は重要です」
福島県伊達郡川俣町から山形県米沢市に避難している佐藤さんは、9月に行われた野田首相の国連総会での演説に合わせ、仲間や自身の子どもたちとともにニューヨークを訪れ、脱原発を訴えた。帰国後、その報告会の中で、福島の女性たちの座り込みを実行することを表明したところ、日本国内外から賛同する声が多く集まったという。「女の力は強いと思った」と佐藤さん。「この行動を通して、いろんな人とつながり、いろんな人と話していきたいと思います。福島の想いを聞いてぜひ他の人にも伝えてください」
「原発いらない福島の女たち」は同日、原発の即時廃止・子どもたちの疎開に関する要請書を経済産業省に提出した。具体的には、(1)すべての原子力発電所を直ちに停止させ、廃炉とすること、(2)定期点検・トラブル等により停止中の原子力発電所の再稼働を行わないこと、(3)子どもたちを直ちに、国の責任において避難・疎開させること。また、すでに避難し、またはこれから避難する住民に完全な補償を行うこと、(4)原発立地自治体を補助金漬けにし、自立を妨げる原因になっている電源三法を廃止すること―─を要請している。
福島市から来た佐々木慶子さんは「福島にもう原発はいらない。子どもたちを守りたい。今立ち上がって声をあげなければ大きな力に負けてしまうと思って来ました」と話す。
福島第一原発の10キロ圏内に位置する福島県双葉郡双葉町から宮城県柴田郡村田町に避難している目黒とみ子さん(64歳)は早朝、新幹線でやってきた。目黒さんは「地域の声を伝えたいと思ってきました」と話す。「双葉町の子どもたちは全員転校しなければなりませんでした。でも転校先の学校で、双葉町からということで避けられ、登校拒否になった子もいます。大人は我慢すればいいかもしれませんが、子どものたいへんさを分かってほしい」。
目黒さんは原発事故後、会津若松に避難したが、ガソリンがなくなり2週間動けなかったという。その後、福井県の永平寺に他の避難者といっしょに滞在していたが、双葉町が封鎖されるかもしれないとの話を聞き、少しでも近くにいたほうがいいと判断し、夫とともに現在村田町に住んでいる。「このたいへんさを少しでも役所の人にわかってもらいたい」と力を込める。
「福島大学安全安心な教育環境をめざす保護者の会(仮称)」のメンバーで、息子が福島大に通っているという女性は「幼稚園や小学校の除染は進んでいるが、大学はまだ行われていなくて不安です。若い人たちの居住・教育環境を守ろうと思い、参加しました」と話す。
座り込みには、福島県外からの参加者も多い。大串節子さんもその一人だ。大串さんは都内在住だが、出身は玄海原発がある佐賀県だ。「原発は、たとえ廃炉にしても、放射性物質を何万年も適切に管理しなくてはなりません。ここにいる皆さんといっしょに反対の声をあげていきたいです」と話す。
「原発いらない福島の女たち~100人の座り込み」では、29日正午に日比谷公園から東京電力前、東京駅、銀座を通るデモを行う予定だという。詳しくは、
http://onna100nin.seesaa.net/
また、10月30日から11月5日は、福島の女たちに続けと「原発いらない全国の女たちアクション」が経産省前での座り込みを呼びかけている。
加えて、広島や島根、大阪、富山などの地域でも、女性たちの座り込みは広がっている。想いを同じくする人たちとつながり、声をあげることで、原発廃炉への大きなうねりになることを期待したい。(村上朝子)