津島佑子さんからの手紙

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メーリング・リストに投稿された、作家・津島佑子さんの黒竜江省、キルギスでの見聞記、そして泊原発反対闘争への支援の呼びかけです。ご本人の許諾を得て転載します。

associations.jp事務局

しばらく中国の黒竜江省もはずれの地方に出かけていました。
ロシアとの国境地帯では、中国側の供給電力の二割をロシアから天然ガスによる電力を買ってまかなう(残りは火力)、中国側はその見返りに中国の物品をロシアに売る、という取引をしているそうです。そのようにして、天然ガスを,熱心に売りたがっているロシアとの妥協をはかっているんだな、と見受けられました。そして電力は夜間の公共物に関しては格安にすることで、建物の大々的なライトアップをして、当地を訪れるロシア人に見せつけているという印象でした。
中国人側の一般感情としては、ロシア人は商売には必要だけど、いやなやつらだね、という感じです。膨大な数の中国人がロシアのシベリア方面に出稼ぎに行っていますが、扱いも悪いし、賃金もひどく安い、という不満もあるようです。
黒竜江省の田舎のひとびとを見ていると、そもそもほとんど国外のことには関心がなく、日々の生活をどうするかで精一杯、携帯電話やコンピュータゲームは使っていますが、ネットについては、そんなもの関係ない、という世界のようでした。国営テレビを見ているわけですが、どこかの国のひとたちのように、それなりに安定した生活さえ守られれば、その情報だけで満足してしまっているとも言えそうです。
ただここでも電力公社(供電局と呼んでいる。そうすると発電は別立てになっているのかも)の地位は絶大なもので、立派な社宅(官舎というべき?)を与えられ、五十五歳の定年退職後も死ぬまで在任時と変わらないお給料をもらえ、ほかさまざまな特権も持ちつづけることができる、とのことでした。官舎もちっぽけな田舎の町なのに、それだけで団地みたいな大きな一角を占めていました。これは国境の町ならではの特殊な現象なのかもしれませんが。

電力というものの権力との直結は、キルギスでも同様で、昨年の政変も当時の大統領の息子が電力会社を所有、そして電気料金を突如二倍に値上げしたのが、直接のきっかけでした。
キルギスでは天山山系からの水だけは豊富なので、電気は当然、水力なのですが、変電所が国内になく、いったん、となりのウズベクに電気を輸出して、安定して使える電気にしてもらってから、それをまた輸入するという手順が必要になっています。ソ連時代は同じ国内でのやりとりだったのが、それぞれが独立したので、そんな妙なことになってしまったそうです。
またソ連時代にロシア人たちが暖房を全部電気にしてしまい、今でも電気頼みの暖房のままなので、電気料金の値上げはキルギス人にとっては命取りになる問題でした。
政変後、ロシアとの関係を見直すのかと思っていたら、先日の大統領選挙でロシア寄りの大統領が選ばれ、そそくさとロシアが提唱する「ユーラシア同盟」に参加を表明してしまいました。そうしなければ、キルギスは生き延びられないという国民の判断だったようです。

中国黒竜江省のあと、用事で北海道にも行ったのですが、ここの泊原発については、訴訟で廃炉を目ざす運動が始められています。原発がなければ、道民は凍死するぞ、という脅しを道知事はかけています。
呼びかけ人は道民が中心となっていますが、支援は全国からお願いします、とのことですので、お気持ちがございましたら、なにとぞこの運動の支援をお願いいたします。訴訟には当然のことながら、お金がたくさんかかります。

銀行口座 札幌信用金庫 幌北支店 普通口座 4281629
口座名 泊原発の廃炉をめざす会 菅沢紀生(スガサワノリオ)

一口千円で、何口でもお願いしますとのことです。

それでは、ご報告まで。

津島佑子