野田首相の退陣を要求する声明文

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野田首相は6月8日の記者会見で、大飯原発の安全性は確保されたから、再稼働を決断したと述べた。しかし、大飯原発の安全はまったく疑わしい。そもそも、福島原発がなお極めて危険な状態にある。にもかかわらず、その実態に関して、情報が秘匿されたままである。また、原発がなければ電気が不足するという見方が虚偽であることは、すでに証明されている。世論調査によれば、70パーセント以上の人々が原発再稼働に反対している。

そのような状況において、野田首相が、「国民の生活を守るために」原発の再稼働を決めたというのは見えすいた欺瞞である。それは、“原子力村”(資本=国家複合体)の要求に応じるために、「国民の生活」を犠牲にしても構わないという判断である。そのことはまた、議論のないままに強行された、原子力基本法の変更にも示される。特に、原子力利用の「安全確保」を、「我が国の安全保障に資することを目的とする」という条文は、原発再稼働の動機が「核兵器」にあることを、初めておおやけに自認するものだ。

かくして、野田首相は、3.11以後、原発事故への反省を深めるどころか、原子力活用を拡大する方向に進むことを公然と布告したのである。ゆえに、われわれは多数の人々の意志を無視しその安全をおびやかす野田首相の退陣を要求する。(柄谷行人)

賛同人
雨宮処凛氏(作家)、鵜飼哲氏(一橋大学教授)、大澤真幸氏(社会学者)、奥泉光氏(作家)、 鎌田慧氏(ルポライター)、高祖岩三郎氏(思想家)、 田中優子氏(法政大学教授)、鶴見済氏(ライター)、毛利嘉孝氏(社会学)